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力なき正義は無能なり

 稽古前の準備運動は、毎回少年部の中から何人かを指名して彼らに進行を任せています。もちろん準備運動は稽古前のウォーミングアップの意味で必要だとは思いますが、自分としては進行役を道場生に任せることの方が意味があると思っています。そして、指名するのはあまり人前で話すのが得意でなさそうな道場生です。

 彼らには、まずは人前で大きな声で話すことに慣れてもらって、それが出来れば自信を持ってその場を取り仕切ってもらい、いずれは必要な時に自分の意見や気持ちをちゃんと発言できるようになってもらいたいと思っています。

 子どもの社会だけでなく、大人の社会でも今やイジメやパワハラは蔓延しています。その標的となるのはいつも抗う術を持たない人です。法治国家である日本で、暴力での問題解決はもちろん積極的におすすめできませんが、それならせめて自分の気持ちをはっきりと言葉にして伝えられる強さが必要です。

 世の中はどうしても謙虚で奥床しい人の意見よりも、仮に誤った意見でも自己アピール上手で、声の大きな人の主張が通ってしまいがちです。空手の世界では『力なき正義は無能なり』とよく言いますが、その力とは肉体的な力だけでなく、自分の意見を強く発信できる力のことでもあると思います。