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痛みなくして得るものなし

 昨日の稽古の前に数人の道場生と個々に少し話をしました。内容は組手に対する恐怖心について。これは昔から現在に至るまでのフルコンタクト空手の恒常的課題のひとつです。当然と言えば当然で、大抵の人は殴られたり蹴られたりするのは怖いでしょう。じゃあ、当てなければいいのでは?となると当てない空手(ノンコンタクト空手)のアンチテーゼであるフルコンの存在意義が揺らぎます。
 実際に相手と殴り蹴り合うフルコンタクト空手の稽古は楽しいだけでは決して済まないものです。組手は痛いし稽古はキツいし、おまけに先生は怖いしで楽しい要素を見つけるほうが難しいくらいです。それでも私は、自分を倒そうとする相手と覚悟を決めて真っ向から向き合うフルコンタクト空手でこそ得るものは大きいと自負しています。
 私は空手界の悪き慣習である合理性に欠ける稽古や『先生がカラスが白い、と言えば白い』などという馬鹿げた師弟関係が激しく嫌いです。しかし、合理的な稽古で身体と心に正しく負荷をかけ、昇級審査や試合に挑戦し、出た結果について悩み考え、そして組手の痛みと恐怖を克服するに至る過程で、肉体的にも精神的にも大きな成長があると考えています。
 それを平たく言うと『痛みなくして得るものなし』となるのかなと思います。