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組手のススメ(保護者の皆様へ)

 組手とは、実際に相手と手技や足技を駆使して戦う稽古です。一般の方が空手と聞いてイメージするのはこの組手稽古ではないでしょうか。
 普段行う基本稽古や移動稽古、型稽古、補強運動、柔軟運動などはすべて組手のための稽古であり、組手に生かされないと意味がありません。組手こそフルコンタクト空手の本質です。
 ただ先日白帯の審査事前講習会で、みんなに「審査に合格すればいよいよ組手が出来るよ!」と伝えると「え?嫌や‼︎」とほぼ全員が揃って返答しました。驚いて「え?何で?」と聞き返すと「怖いもん‼︎」と即答。喜ぶと思って伝えたのですが意外な反応でした。
 確かに怖いイメージもありますし、全く痛みが無いということはありませんが、私は組手をやらないうちは空手の面白さは分からないと思います。組手では顔面への手技での攻撃は禁じられているので(足技での攻撃は可)頭部へのダメージは少ないですし、頭部、胸部、拳、膝、脛、金的には怪我防止のためのサポーターを着用します。そしてもちろんディフェンスの練習も行います。それでも絶対怪我をしない訳ではありませんが、痛みの無い組手はバーチャルゲームと変わらず、それでは痛みという現実と向き合うことを大切な修業の一環と位置付けるフルコンタクト空手をやる意味がありません。
 それに個人的には組手は最高のコミュニケーション手段だと思います。人間は言葉を介してお互いを理解し合あうことは中々難しく、言葉の受け取り方によっては誤解も生じますが、組手を前にすると人は正直です。
 怖くて動けなくなる人、強気な人、卑怯な人、誠実な人、傲慢な人、怖くて逃げ出したくてもグッとこらえて向かってくる勇気のある人など様々ですが、いずれにせよ組手にはその人の人間性が大きく出ます。 

 お互いを分かり合うには子供なら一緒に遊んだり、大人ならお酒を飲みに行ったり、恋人同士なら散歩をしながらのんびり語り合ったりといろんな方法がありますが、私ならその中でも組手が一番。アラフィフの男性なら子供の頃、喧嘩でお互いに殴り合ってそのあと仲良くなった経験のある方も多いと思いますが、それと同じです。

 というわけで、白帯の皆さん、最初は怖いと思いますが、まずは一歩踏み出して組手に挑戦してみましょう。保護者の皆様も、その時が来ればぜひ背中を押してあげてください。