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道場は非日常の空間です②

 テーマは前回の続きです。

 道場は非日常の空間です。そして、その道場に日常を持ち込むことはご法度です。

 前回書いた通り、道場の存在意義とは、ある種特殊な非日常の空間に身を置くことで自身の肉体的精神的成長を促すことですから、そこに日常の雑事を持ち込んでは元も子もありません。家庭内や学校、仕事関係で起こる諸々の問題や、人間関係の煩わしさ。生きていると色んなストレスがあります。それが道場で汗を流して稽古した結果、道場を出るころには心の中の澱が流れ出て晴れやかな気持ちになっている、ということは確かにありますし、私も何度も経験しています。でも、それは結果としてそうなっているだけで、「日ごろの憂さを晴らしてやろう」とか、「今日はなぜか気分が乗らない」なんていう気持ちで道場に来られては周囲の人が迷惑します。ましてや相手のある稽古ではそれが思わぬ事故につながります。緊張感のないまま稽古をしたり、逆に浮かれた気持ちで稽古したり、相手に悪意を持って稽古を行った場合、決してお互いに良い結果を生みません。「身体を動かして汗を流して気持ちいい」だけが目的ならスポーツジムでもサウナでも、それを満たしてくれる所は他に色々とあるでしょう。あえて道場を選ぶならその意味は理解しておいて欲しいと思います。

 人間ですから不調な日もあるでしょう。でも、いざ道場に来て気持ちを切り替えることが出来ないくらいなら来ないほうがマシです。少なくとも一研会は個人的な感情をぶつけ合う場では断じてありませんし、それは許しません。道場に入室する瞬間、諸々の問題はいったん切り離して、無心に稽古に取り組むのは一緒に稽古する仲間に対する最低限の礼儀です。

 小学生でも中高生でも一般部でも長く空手を続けていればそれが理解出来ていると思います。道場は年齢、性別、社会的地位などは関係なく、同じ志を持った者同士が一緒に汗を流せる貴重な場所です。だからこそ、「親しき中にも礼儀あり」の精神で、お互いに礼を尽くして稽古に取り組み、稽古後は清々しい気持ちで道場を後にして欲しいと思います。