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道場は非日常の空間です①

 今回は最近新しい道場生が増えて来たということで、道場生や保護者の皆様に「道場とはどういうものか」を知ってもらうには何から話せばいいかと考えた末のお話です。上級者の道場生は復習がてら読んでください。 

 道場でよく見かける光景ですが、入会したばかりの幼年部や小学校低学年くらいの道場生が道場内に入るのを渋ることがあります。理由を聞いてみると「お母さんと離れるのが嫌」「道場の雰囲気が怖い」「眠い」「お友達と遊んでいる途中だった」などを挙げることが多いです。要は日常の安心できる空間から道場という非日常の空間に身を置くことが嫌ということです。

 道場は非日常の空間です。例えば、組手。組手とは実際にお互いの身体を殴り蹴り合う空手の稽古の中でも最も過酷なメニューのひとつです。仮にこの組手をいきなり路上で始めたらどうなるでしょう。まさにそれは事件です。そんな組手が道場内では当たり前に行われています。では、なぜそんな痛く辛い思いをしてまで道場に通うのかといえば、非日常に身を置くことが自身の成長につながると考えているからです。

 もし普段の平和な生活の中で何らかのトラブルが起きて、それを自分の力で解決出来ればその体験は自身の財産となります。でも、そういったトラブルに巻き込まれるのは色んな苦痛を伴う恐れがあるので、そんな変化を人は本能的に嫌います。だた、それでも道場に来ることを自らの意思で選ぶ大人はその意味を理解していますが、幼年部や少年部の道場生はそうはいきません。大人の思惑でいきなり異質な空間に放り込まれた彼らは当然それに抵抗します。だからこそ指導する側は、その先にあるものを知って欲しいために、ハードルを下げてでも彼らに楽しい稽古メニューを提供します。そして段階的に課題を設け、徐々にそのハードルを上げながら彼らの成長を促します。

 ですので、保護者の皆さんは入会してしばらくの間は指導員と綿密にコミュニケーションを取りながら、お子様の変化を暖かく見守っていただきたいと思います。空手の稽古は決して楽しいだけではありませんが「痛みなくして得るものなし」です。

 楽しいだけの稽古はいずれ破綻しますし、辛いだけの稽古も同様です。その稽古を少なくとも幼年・少年・学生の間は何とか楽しく出来ないかと自分はいつも試行錯誤しています。 次回に続きます。